ギリギリの動く指先

これが鬱だと理解したのはすぐだった

 

バイトからの帰り道、腹が減っていたのでこの時期に闇営業している店に入る

 

ババアから「今お客さんいっぱいだから15分ぐらいかかる」と言われた

 

どう考えても15分程度なら待っていられる

 

しかし俺は「あ、めんどくさいんだな」と思い深く考えずに店を出た

 

そして少し歩いて拭えぬ違和感に押しつぶされた

 

あまり使いたい言葉ではないが俺は客だ

 

現代日本で客が譲歩することなどあっていいのだろうか

 

というよりもそこで空気を読み下がってしまった己の弱さに潰された

 

そこから自室に戻るまでの道は険しかった

 

いつもと何ら変わりない道が迷路のように俺の前に立ち塞がり坂のように俺の体力を奪う

 

ようやく抜けると次は部屋の扉という巨大な壁が立ち塞がった

 

とある事情から俺はその部屋が俺のものではないような気がしていた

 

入りたくない

 

その思いは足に伝わり指先に伝わり俺はアパートの前でタバコに火をつけた

 

2本吸った後に立ち上がる

 

とうに尻は痺れていた

 

部屋に入っても居心地が悪い

 

ゲームも動画も何もかもがつまらない

 

オナニーもする気にはならない

 

が、した

 

義務感による毎日の発射

 

そんなものは本当のオナニーではない

 

俺はその手でこの文を打っている

 

俺はこれから少しデッキをいじってから夜の散歩に出掛ける

 

もしもその旅路に何かあれば

 

これを読んだ誰かぐらいは

 

義務感ではない正真正銘のオナニーを楽しんで欲しい